ICT支援員とGIGAスクール構想その6

カテゴリー: インタビュー   パーマリンク

こんにちは、ICT営業担当のMです。ついに全6回中最後の回となりました。

前回は弊社ITCE1級保持者のO の理想の教育現場、ICT機器を文房具と同じように活用する環境についてY先生にご意見をいただきました。学校の環境は無線化が進んでいき、形が見えてきたに思えましたが、家庭でのWi-Fiの有無などにより格差があることを知りました。今回は、その課題についての向き合い方とY先生の理想の教育現場について伺いたいと思います。

 

M             Y先生、前回、家庭でのWi-Fi環境の有無について課題があげられました。
こういった課題に対して私達はどのように向き合うべきなんでしょうか

 

Y先生      子どもの教育というのはやはりこういう環境についての問題が付きものです。
私の担当自治体でアンケートをとったところ、子どもがインターネットに接続する環境が整っていないところは全体の約10%でした。Oさんの担当自治体でさっそくやっていただくとすれば、まずはおっしゃられた「保護者が家にいない時に子どもがメールを確認する環境の有無」を調査するためにアンケートをとっていただくことかと思います。それをすると予算規模が見えてきます。

 

O             そうですね。実は私の担当自治体でも現在調査中です。しかし、学校数も多いので集計に時間がかかっています。Googleフォームなどで実施することも検討していたのですがWeb上に個人情報が上がることに対して条例が厳しいので…。

 

Y先生      個人情報はなくても良いのでは?

 

O             例えば、何々学校の何年、何組、何番だけでも入力するとそれは個人情報なので。

 

Y先生      確かにそうですが、例えば個人に記号だけ渡しておくのはどうでしょうか。多少間違っていても問題ないのでパスワードのようなものをお渡しする。

 

O             はい、私もそう思いますが、やはり紙ベースが一番早いというご判断になりました。

 

Y先生      その発想は残念ですね。

 

O             先生がおっしゃる通り、1対1の対応表だけ学校で所持し「あなたの記号はこれです」という形で実家庭だけでやりたければ、実家庭だけに配れれば一番早いかとは思います。

 

Y先生      内容によっては対応表も不要かもしれません。各学校何%必要かは自治体としては知る必要はないかと思います。全体の何割必要かを知るだけであれば、5桁くらいの暗号一覧表だけあればバーコードみたいに入れておくだけで良いかと。

 

M            うーん…。なかなかそういう動きをしたくてもクラウドが危険とかパソコンが    怖いとかの考え方がまだまだありますから難しいのかもしれないですね。

 

Y先生      私の担当自治体の上層部にもそういった考え方の方はいっぱいいます。本当にそういう方々を動かすのは大変だと思います。個人情報やセキュリティを守ることは本当に大事なことなんですが、個人情報がなんなのか、セキュリティとは何なのかを理解していないままそういうことを言っている方が多いんですよね。

例えば個人が特定できない数字の羅列を入力しアンケートに答えてもらう分には個人情報ではないんですよね。その数字の羅列に対応する名前が無ければ個人情報にはならないのに、それも理解できないから話が進まない。

 

O             各学校のどこの家庭がWi-Fiもっていないのかを知りたかったのでそうなると難しいですよね。

 

Y先生      そこを知りたいと思うところが少しズレを感じます。今欲しい情報は環境を整えるための予算獲得のはずです。であれば欲しい情報はマックスでも、どの地域の環境が少ないかくらいです。つまり、マックスでも学校単位で十分です。“どの家庭に”というのは、実際に動く段階で聞けばいい話のはずです。

 

M            なるほど。いきなり全ての情報を集めようとするのではなく、まずどういう計画でやらなくてはいけないのか、そのための予算はどのくらい必要なのかを固めてから話を進めるべきだということですね。

 

Y先生      そうです。個人情報やセキュリティが厳しくなる原因はそこなんです。いろんなことをまとめてやろうとするから進まなくなる。必要な情報を必要なだけ獲得すればいいんです。

 

M            確かに、例え一気にやろうとセキュリティ、個人情報の取り扱いについて万全を帰したとしても、結局、結果次第でもう一度やらなくてはならないことが絶対出てきますよね。

 

Y先生      そうです。結局レンタルWi-Fiを貸し出したりするときには、面接したり直接保護者に手渡しするなどの動きをせざるを得ないのですから。まずはWi-Fiルータが何台必要でそれには予算がどのくらいいるのか確認する。そのあと、各学校で申し出があった方に貸し出す。環境の有無と申し出の有無は別の問題ですから。

 

M            そうですね。そういう形で子どもたちにWi-Fiルータが届けばGIGAスクール構想での端末一人一台と合わせてきっとよい教育が生まれていくと思います。

そこで、Y先生に最後に伺いたいのですが、前回の対談でも伺ったY先生の理想の教育現場についてです。

AIを活用した教育について大変面白かったので今回も先生が現場でこうあったらいいなぁ。ということを教えていただければと思います。

 

Y先生      まず、「AIに任せることを恐れない指導者になれ」ということです。 先ほどICT支援員に対することでも話した通り、人対人でないとカバーできないことは必ずあります。

やはり、そこのプロに先生はなるべきです。学習指導要領に示された最低限の内容はAIがやってくれる。しかし、それに漏れてくる悩みや苦しみ、それこそ家庭を含めたことはできる範囲は限られますがそういうことに対してもしっかりと寄り添ってあげられる人格教育というか、人間教育というか…そういう先生になっていくことを目指していくためにICTが中心にいてほしい。人よりも合理的なことはAIに任せ、人にしかできないことに先生は注力するようになる。

 

M            確かにそれが理想ですね。

 

Y先生      理想という話をするのであればそういうことになります。ですから先生の数は    逆にたくさん必要になるかもしれませんね。一人でカバーできる範囲が限られてきますし。

子ども相談センターとか児童相談センターってありますよね。あの役割も預かる部分ではそちらに担っていただきたいが初期の助言、アドバイスなどは先生が対応できるようになってほしい。それこそ児童福祉士と教職員免許はセットで必要になったほうが良いのかもしれません。

 

M            そうなると「先生が教える」という世界はなくなるのかもしれませんね。

 

Y先生      「教える」というのがそもそも横暴だと思っています。前回も話しましたがGoogleやWikipediaのほうが教えることについては上手なんですから。

 

M            本当にそういう形が理想だと思います。

 

Y先生      理想というか、もうそういうふうになっていきますよ。

 

M            あ、Y先生の理想もOさんの理想も勝手にそうなっていくということですか。

 

Y先生      というかもうなっていますよね。コロナ禍により子どもたちは家でなにも困らず学んでいますから。そのなかで分からないこととか、不安なこと、相談したいこととかがあるから双方向型リモートで対応したりしていますよね。そこの部分は人しか無理です。Googleは不安感までは払しょくしてくれませんから(笑)

 

M            コロナ禍の中で勉強しないとかそういうことはなかったんですか?

 

Y先生      これは、少し恐ろしい話なんですが…家庭の差です。ある地域なんかはこのまま学校が無い方がいいなんてことを言います。これは親が子供の成長、学びにしっかり関わりながらやっている家庭ではむしろ関われる時間が増えたので幸せな時間が増えただけだからです。

 

M            ああ、確かに。

 

Y先生      学校を子守の場所としてしか考えていない家庭では子どもがいることが苦痛でしかないかもしれません。学びに関わっている家庭の子供はコロナ禍があろうがなかろうが、逆に充実することはあっても困ることはないでしょう。そういう子どもは学校ではミニ先生みたいに頼りにされたりします。「ちょっとあの子みてきて」みたいな感じです。すると学びをより深めていくんですよ。

現在の教育の格差は、確実に家庭の格差となっています。そして日本はどんどんこの格差が広がっています。

 

M            おっしゃることはわかります。確かにコロナ禍により、より浮彫になりました。

 

Y先生      そうですね。以前、お話ししましたインターネット環境がない家というのはそういう家庭だったりします。

 

M            ああ…確かに。今インターネット環境なんて月何千円って世界ですよね。お金の事情ではない。インターネットなんて必要ない!という考え方が変えられない人は確かにいます。

 

Y先生      まったく別の理念でやっているかたはいいんです。例えば手に職とかそういうICTとは違う価値観でしっかり子どもと向き合って教育されている方です。

そういう専門の職業ですね。しかし、そういう方は学校に頼りません。それこそ学校がないので畑作業に専念できるとか漁師として魚を捕りに行くとかそちらに時間が使えますから。

 

M            たしかに!それはそれで必要な職業ですし、生きていくための知識ですよね。

 

Y先生      その先のICTの理想は、そういった家庭と子どもの隙間を埋めてくれたらいいなと思います。それがそもそも、ITにCが付いた要因ですから。ICTが時間と距離を縮めてくれる。例えばリモート会議なんかは東京、名古屋間を埋めてくれます。

 

M            親子のコミュニケーション不足もリモートで解消できるかもしれません。

 

Y先生      そうですね。そして、こういう隙間を埋めることで教育の格差も埋めるチャンスがあるのかなと思っています。ぜひ、ハイパーブレインさんにはそういったソリューション作りをお願いしたいです(笑)

 

M            そうですね。いやー、今回も本当に面白い話を聞けました。Oさん、Y先生本日は貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。

 

O             本当にモヤモヤしている部分がY先生に言語化していただきクリアになりました。ありがとうございました。

 

Y先生      私も楽しくお話しさせていただきました。本当にありがとうございました。

 

今年はGIGAスクール構想やコロナ禍による影響でICTに対して変化が問われる年となりました。タブレット一人一台、リモート授業、ICTがより身近になるにつれ変化に対応できない、対応したくても事情により対応できない先生や家庭は確かに存在しています。

Y先生の話を聞き、私は営業としてこういった状況の中、そういった方々も十分にICTを活用できる、様々提案をしていきたいと思いました。なぜなら、その方々の前には子ども達がいるからです。

Y先生は「教える」より「学ばせる」ことを意識してほしいと言います。私もその通りだと思いました。今回の対談で私たちハイパーブレインの仕事は子どもたちに「学ばせる」環境や状況を作ることなのだと改めて感じました。

 

対談を全6回にわたり、連載させていただきました。

お付き合いいただき、ありがとうございます。

また何より、この度の対談にご協力いただきましたY先生に心よりお礼申し上げます。

2012