ICT支援員からの相談

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こんにちは、ICT営業担当のMです。

コロナ渦で緊急事態宣言が発令される地域もある中、教育現場においては、先生方や子どもたちが大きな負担の中で学びを続けているかと存じます。そんな中だからこそ、先生方、子どもたちの学びのために、ICT支援員の力がより一層必要になると感じています。

そこで、実際に現場で活躍しているICT支援員とY先生の対談を通して、ICT支援員に何が求められているのかを考えていきたいと思います。3回に分けて掲載させていただきますので最後までお付き合いください。


M:Y先生、今回はICT支援員の相談室という形で弊社のICT支援員からの相談を受けていただこうかと思います。

 

Y先生:実際に現場で活躍している方の意見を聞けるということで楽しみにしていました。よろしくお願いします。

 

M:今回はICT支援員歴1年のKと支援員としてはベテランのT、それぞれからの目線があると思いますので聞いていただければと思います。早速ですが、支援員歴1年のKさんからY先生へ聞きたいことがあるとのことで、よろしくお願いします。

K:はい。まず、お聞きしたいのが、支援員としてプログラミング授業の支援している中で、「よそごと」をしている子どもに対してはどう接したらいいのか、ということです。それぞれ子どもたちには特性があり、それぞれ違うとおもいます。踏み込んだ対応をその子に対して瞬間で見極めるのは難しいのですが、ちょっとでも何か今以上にその子のためにできることはないでしょうか。

 

Y先生:まず、Kさんが素晴らしいのは子どもによって違うという認識をもっていらっしゃいますよね。それは見事に本質をついています。それが分かっている時点で私は安心しました(笑)。Kさんがおっしゃる通り、子供たちの中でも、初めて会った時に色々なことをする子どもはいます。その時にどこまで踏み込んだらいいのかは教員である私たちでも迷います。
教員でも「こう接してあげたらいいのか」という自分なりの回答を出すのに、小学校だと3日ほど時間が必要ですし、中学校になると担任で1週間ほど、教科担任になると会う機会が減るので1ヶ月程度は時間が必要になるかと思います。
ただ、それは「その教員とその子」との関係性の中で先生が決めた接し方になるので、「支援員の方とその子」との関係性は全く別なものになってしまうため、同じ方法では当然上手くいかないこともあります。実際には時間をかけて接する方法を見つけていくしかありません。

 

M:実際の先生でも時間がかかる。支援員はより接する時間が少ないですよね。

 

Y先生:とにもかくにも大体子どもの7%が発達障害と言われており、クラスに1人は存在する状態です。医師でしか判断できないことを週に1,2回訪問する程度、実際には週に1回接するかどうかという支援員の方が自分で接し方の判断をすることは非常に難しいです。先生と事前の打ち合わせができなかったときは、ある程度の距離を持つことを意識して接していただくことで自分を守るということ、ひいては子供を傷つけないことになります。

 

M:確かにその方がお互いのためなのかもしれません。

 

Y先生:支援員の方に私からお伝えできる術として、「よそごと」をするということは他のことに興味がある、ということです。私たちは「よそごと」と捉えず「他のことに興味がある」という捉え方をしています。なので「何に興味があるの?」と聞いてあげればいいんです。子どもから「こういうことがしたい」と返ってきたものが今やろうとすることに近い、または繋げられるならばその方向で「こういう風にやってごらん」という話ができます。それを授業内、もしくは終了後早い段階で担任に、「あの子がこういうことをやりたいと思っていたので他の生徒とちょっと違う対応をさせて頂いた」という報告を行って頂ければ良いかと思います。

 

K:なるほど。他のことに興味があると考えれば確かに「よそごと」ではないですし、大切なことですよね。

 

Y先生:プログラミング授業のポイントとして、プログラミングは「構築」というワンクッションが入ります。動きをブロック等で構築してから、できあがったものを使ってロボットなりキャラクターなりを動かすという流れになります。触ってすぐに物が動くのではなく、構築のワンクッションが入るので、自分がやったことに対して興味がある子はどんどんプログラミングを追求してくれます。

 

M:ブロック構築のほうが面白いっていう人もいるくらいです。

 

Y先生:そうではない子どもは自分でやった操作が瞬時に分かるもの、色を変えたりキャラクターのサイズを変えたり背景を変えたりというすぐに結果が分かるものにいきたがるわけですね。ただ背景や色を変えることは脱線しているわけではなく、プログラミングをやっていく過程の順番が違うだけなので、「先にやってもいいよ」と肯定してあげてください。「ただし、1つ条件があるよ。君は色を変える/背景を変える/サイズを変えるプロになったんだから今度このことをやるときには周りのみんなに教えてあげてね」って言ってあげるんです。

 

M:その子が興味を持っていることを掘り下げてプロになってもらうということですね。

 

Y先生:そうです。たいていの学校のパソコンではパワーポイントが入っているので、なければクラウド版でも可能ですが、気に入った背景が無ければこうやって自分でも作れてJpegで保存して背景にできるんだよということを教えてあげるんです。ここまでできたらもうプロだねという感じで、その子の興味関心を掘り下げて教えてあげられるよう予め想定しておくことが大事ですね。

 

M:たしかに! 画像を自分で用意するのも一つの技術ですよね。

 

Y先生:実はプログラミングの評価は「構築をちゃんとやっていたかどうか」を評価にしているわけではなく、「興味関心力」を持ってやれたかどうかなんですね。ですので生徒によってやることは違っているけれど一生懸命興味を持ってやれば花丸なんですよ。そうやって生徒の興味に向き合って教えてあげると、次の授業の時には「〇〇先生、好き!」ってなるわけです。そうなったら「次は前にやったことに戻ってやってみようか」とみんなとやったところに戻ってやってみる。そういう感じで進めていけばいいんです。子供に寄り添う、ということは口で言うのは簡単ですが、実際にやろうとするとこういうことなんです。学校の先生でもこういったことができない方がけっこう多いようです。先生はその日にやりたい指導計画があったらなんとかこなそうとしてしまって、そういう他ごとをやる子を異分子として見てしまうことがありがちなのです。

 

M:なるほど、そこまで進めなくてはならないからですね。

 

Y先生:そうです。いわゆる教科の場合は文部科学省が示した学習内容があるので、やらなければならないのもあるので、そうなってしまうのは仕方がない部分もあると思います。しかし、こと情報関係に関して言えばそうはいかない。先ほどの例で例えるなら背景を変えることは実際には論理的思考で行っていますよね。それを良しと私は考えます。別にそれをプログラムを使ってやる必要はありません。プログラミングソフトによってはそのまま背景を変えることができますので、そちらの角度から教えてあげることも良い方法だと思います。
ICT支援員はICTに関わる専門家なので、イメージとして、担任の先生がガイドブックに示された登山道しか知らなくてそれしか教えられない場合に、こんな谷筋を通っても頂上に着けるよということを教えてあげればいいんです。隣の山に今登っているけど尾根伝いに行けばいいや、と思えるかどうかなんです。

 

M:顔の絵を描くときも輪郭から描く人もいれば目から、鼻から描く人もいますね。どこから描き始めてもできあがる形は顔の絵になる、のと同じような感じですね。

 

Y先生:そうなんです。その時に担任の先生と違う専門性を発揮して欲しいですね。こういう風にやってもできるね、と伝えられればOKなんです。

 

M:先生からはこういう順で行う、という流れでないと教えにくいのでしょうか?

 

Y先生:実際はそうだと思います。

 

M:そうなると嫌がる先生もみえると思うんです。先ほど話を頂いたように角度を変えた話もしにくい場面もあるのかな、と。

 

Y先生:その場合は事前に打ち合わせをしておかないと厳しいと思います。もしくはICT授業支援の専門家として支援させて頂いた後に、「違うことやっているよ、と指摘しましたが先生が仰っている流れでの操作ができなかったため、こういったことをやらせてみました。ただ、この道筋でいけば実は先生がやられたいと思っていたことができますよ」と説明して次回授業をされるときに先生がどう指導すればいいのかを理解して頂いた上で勝手な動きになったことを謝罪する形にするかですね。

 

M:なるほど。ちなみにKさんは今まで授業プランを立てて上手く伝わらなかったことはあるんですか?

 

K:ありがたいことに伝わらなかったことはないですね。やはりご多忙だと思いますので打合せができなかったりすることはありますが、聞いていただくときはしっかりとお話しさせていただいております。

 

M:これはコミュニケーション能力の発揮のしどころなのでしょうか。

 

Y先生:コミュニケーション能力というか……そうですね、私がICT支援員に一番期待することは、学校の先生よりICT関係に詳しいプロとして「本当に子どものために寄り添って欲しい」ということです。ただそれはあくまでも子どものためなので、授業の後に「この子の一生懸命なところを担任の先生に伝えなくては」という意識をもってほしいです。Kさんの「この子のためにこう関わらせて頂きました、この子はこういう興味をすごく持っていて、熱心に取り組んでいました」ということを素直な気持ちで伝えることは結果コミュニケーション能力の高さにつながるかもしれませんが。

 

M:なるほど、コミュニケーション能力というかポリシーに近い気がします。

 

Y先生:そうですね。以前のインタビューでもお話ししましたが、ICT支援員が「教育のプロ」になろうとすると辛くなってしまうところがあると思います。熱心な方だと教育学や教育心理学等を始めとした学問を学ばれているとは思いますが、自分が得意な土俵であるICTに関わる仕事をしようという明確なポリシーを持っているのであれば、それをブレないようにしっかりした気持ちを持っていただきたいと思います。

 

M:私の得意な営業の土俵、ICT支援員にとっての土俵。それを軸にした結果、子どもたちのためになるというのが理想ですね。

 

Y先生: ICT支援員は子供にとって最も導きの豊かな先生なのです。なぜならこの時間内にこれを学ばせないといけない、という学習指導要領に固められずに動ける「自由」さがあるのですから。文部科学省は論理的思考を身につけるということ以外は、プログラミングの内容としてこれをしなさい、とは定められていないので専門家として一人一人に合った支援がやってあげられることができるんです。自信を持って楽しんで頂ければいいと思います。

 

K:ICT支援員として授業に携わらせて頂いているうちに段々と「予定通りにやらないといけない」という考えになっていて、なんとか全員をゴールまで導いてあげないと、という気持ちになって子供たちの動き方の筋道を立ててしまっていたなと思いますね。

 

Y先生:子どもたちの動きを決められた枠組みの中に押さえこむ、という教育を行ってしまっているので日本は新しいプラットフォームを生み出す力、GAFA等を生む力が出てこないのではないかと思います。ですが、日本では枠組みの中でちゃんと行動するようになることが逆に「成長した」と感じてしまうことが恐ろしいことです。やりたいようにさせてあげて、本質的な喜びを1人でも味わわせてあげられるようにして欲しいなというのが私の願いです。


ICT支援員目線からの質問はかなり新鮮でした。Y先生のおっしゃった「子どもに寄り添って考える」ということを私たちも忘れてはならないのだと思いました。次回も引き続きICT支援員からY先生への相談を掲載いたします。お楽しみに。