教育ビッグデータの具体的な活用例は参考になります

皆さんこんにちは

ICTに関する様々な動きが加速度的に出てきましたね。
文科省からは「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」について が公開されました。
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1411332.htm
トップページに重要なお知らせとして掲載される力の入れようです。
大きな可能性を秘めている様子
今日は教育ビッグデータの現状・課題と可能性についてご説明させていただきます。

個人の学習記録データについて、簡易で継続的に、様々な種類のものを取ることが技術的に可能になってきている旨が述べられています。
ただ、データを収集しても、データ項目やデータ収集の用語等が統一されておらず、ルールもなく、データ連携や分析が効果的に行われていないのが現状である、とも述べられています。
私たちも日々の学校からのお問い合わせ、訪問記録等をデータベースに記録していますが、そこへの記載ルールや表現方法、使用する言語の定義等を1週間に1回程度は確認しています。そうでなければ、そのデータベースを分析、集計する際に大変な労力が必要になります。これは、集計業務をしたことがある方ならわかっていただけると思います。行政職の皆様はだいぶんお分かりいただけるのではないでしょうか。
同じ「校内LAN」という言葉が何を指しているのか、「ネットワーク」のことか「インターネットでのWEB閲覧」のことか、「校務支援システム」のことか、「校内LANを利用できるパソコン」のことか、文脈を確認しないまま同じ分類で集計・統計・分析を行うと正しい結果が得られません。
手引きでは、将来的には医療や福祉の他分野とデータ連携することでよりきめ細かな指導・支援が可能となり得る、とあります。まったくその通りで、未来の教育に重要で不可欠な基盤となるものであることは明白なのですが、一つに結びつけられた個人のそのデータを閲覧してよいのはどのような権限を持った人なのか、自分で見ることは可能なのか、データ漏洩した場合の対処方法は等考えなければならないことはたくさんあります。
ですので、諸外国ではどのように扱われているのか、「飛躍的な学びの改善」が行われているとされる、イングランド、アメリカ、オーストラリアが例示されています。

教育ビッグデータを教育改善に活かしている典型例がイングランドである、ということだそうです。
各学校において、生徒・教員・学校管理に関するデータを蓄積、学校マネジメントや学校評価に利用しているとあります。教育水準局は、各学校のデータを活用して学校評価をしているということで、エビデンスに基づいた評価をしていると捉えることができますね。
各学校では、MIS(管理情報システム)と呼ばれる校務支援システムに、出欠席、課題の提出状況、成績や所見等学習活動に関するデータが日常的に入力され、蓄積されているということです。出席簿に線を引くのではなく、パソコンに入力がされているわけですね。
この校務支援システムは様々な条件でデータを抽出して相関を見る等の分析機能や、声がけが必要と思われる子どもを自動的にリストアップする機能等があり、教師の授業の設計や個別指導に活用されているとのことです。
ここで、日本なら「学級経営をするうえで子どもたち一人一人の状態は自分が一番よくわかっている。心を持たない機械に何がわかる。」というような意見が出てきそうなところですが、先生方が一番子どもたちのことをわかっている、という前提で、その先生のアシストをしてくれるシステムだという理解をしていただければと思います。首長部局、特に財政は「先生が子どもたちを見ていればシステムなんかいらないじゃないか」という意見が出てきがちですが、40人の子どもたちの状況を瞬時に判断する特殊能力を持った先生は、いくら専門性が高いと言ってもそう滅多にいらっしゃいません。こういう能力は特に知力体力を消耗しますから、先生がお忙しくなれば感度は鈍るでしょう。そのため、疲れずいつも安定したパフォーマンスを発揮するシステムが先生をアシストし、「A君は先週に比べて今週の課題の提出率が10%落ちています」という事実を先生に伝え、先生が判断し、先生がA君に最適な言葉を選んで声掛けを行う、というように利用すればよいのではないでしょうか。

イングランドでは、毎年学校向けとMIS提供企業向けの両方に、教育的な観点から蓄積すべきデータ項目を含むガイドラインを出しており、MISはこのガイドラインに併せて毎年改良されているとのことです。
時代が変われば必要な情報も変わりますし、データを蓄積した結果、もっと必要なデータがわかったり、入力の手間に比べてこれは…というのが見つかったりするでしょう。毎年改定が大変なのか妥当なのか、現場の意見が聞きたいところですね。
そして特筆すべきは、イングランド教育相や地方教育当局は、各学校のMISのデータを抽出することでその学校の様子を把握することができるため、各学校は行政からデータを聞かれることがなく、報告書を手作業でまとめる必要もない、というところです。
先生の多忙感、負担感の大きな比率を占める「各省庁等からの調査」にかける時間がまるっと必要なくなるわけですから、それだけ子どもたちと向き合う時間がうまれますね。
イングランド教育省はさらに、WEBベースの分析システムを学校向けに提供しており、MISに蓄積されたデータや全国学力テストの結果等を活用し、自分の学校と似た条件の学校とを比較することができる、とあります。他校の様子も学校は知ることができる、というのは驚きですね。
学校の評価にあたっては、学校の平均値だけで判断するのではなく、コントロール外の環境を考慮し、子どもの学力がどれだけ伸びたかに着目して学校を評価する状況ごとの付加価値により測定する考え方が導入されているということです。学力テストで平均値が最下位だったから先生の給料を下げる、という考え方ではないということですね。
データに基づいた教育改善の文化が根付いている、とありますが、いったいいつくらいからこのような文化になったのか、どれくらいで変化が見られたのか等、知りたいことはたくさんありますね。

次回はアメリカ、オーストラリアについてご説明させていただきます。

何かご質問、ご意見等ございましたら是非お聞かせください。
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