令和の日本型教育とは17

「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)が令和3年1月26日に中央教育審議会より出されました。

この答申を少しずつ読んでいきましょう。今までチュウキョウシントウシンとカタカナで聞こえていた内容が、中教審答申と漢字で聞こえるようになるように、行政職の皆様も知識を蓄えていっていただければと思います。

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本日は第2部各論の1「幼児教育の質の向上について」を読んでいきましょう。

大前提として、この答申は、文部科学省が出している、という理解が必要です。もちろん、「幼児教育施設における教育等の内容の基準である幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号)、保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)、幼保連携型認定こども園教育・保育要領(平成29年内閣府・文部科学省・厚生労働省告示第1号)(以下「幼稚園教育要領等」という。)が平成29年3月に告示され、子供に育みたい資質・能力1等を共通化して明確にするなど、その内容について一層の整合性が図られたところであり、平成30年度から新幼稚園教育要領等に基づいた現場での実践が始まっている。」(幼児教育の質の向上について(中間報告) P4より引用)ということにはなっています。ですが、幼稚園教諭と保育士では国家資格が違います。整合性を取るために現場の先生方、保育士方はとても熱心に働いていらっしゃいますが、学校入学時には「様々なバックボーン」であることの理解が必要ですね。

さて、基本的な考え方として答申では3点述べられています。

  • 人格形成、教育の基礎を培う
  • 生活体験が不足しているという課題
  • 幼児教育の充実、人材確保、専門性向上、体制の構築等が必要

かつては「子ども相手なんだから簡単だろう」という意識がどこかにあり、幼稚園教諭や保育士について、賃金の課題は大きく取り上げられないというような論調があったこともありました。ですがそれは大きな間違いです。幼児期の発達の特性を理解し、待つべきところは待つ、手を出さなければならないところは手を出す、伴走者であることの専門性が高く求められる職業ですね。また、保護者との緊密な連携も必要です。保護者の悩みを解決したり、困りごとを察知して適切な場所に紹介をしたりしている先生、保育士は非常に多くいます。

つい先日、2021年8月23日に施行された学校教育法施行規則の一部を改正する省令では、「スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーに関する規定を幼稚園に準用させること」という改定がなされました。スクールソーシャルワーカーが幼稚園にも入って、困っている保護者に適切な支援を実施することで、子どもも保護者も早いうちから必要な支援が受けられるというのは非常に大切なことです。

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答申では、幼児教育施設では環境が子どもの発達にとってどのような意味があるのかといった環境の教育的価値について研究を積み重ねていくことも重要だ、とあります。子どもたちが学ぶ集団、環境で、困っている保護者も助け、つらい思いをする子どもが減ることは国全体が良い方向に向かっていくために必要なことだと考えられます。先生の専門性を高め、適切な支援人員を配置し、チーム学校の理念がどの教育段階でも取り入れられることが今後必要になってくるでしょう。

また、小学校教育との円滑な接続の推進を図ることが必要、とあります。筆者の子どもたちは、「命にかかわらない限りなんでもOK」の緩い公立保育園に通っていたのですが、小学校になって、規律を求められたときに、先生の言うことを聞く・聞かないで評価がとても違うことに、非常にギャップを感じた、と言っていました。

40人の子どもを一人で面倒を見なければならない小学校の先生が、規律を重んじるのは当然です。そうでなければ40人に対して授業はできません。ですが、今後「個別最適化」を実現していくためには、必要な規律と、そうでない規律が区別されて、子どもたちの小学校へのハードルが下がるといいな、と思います。

そのためには、幼児教育施設と小学校の双方の教職員が、両者の教育について理解を深め、教育上の課題を共有していくことが重要である、とあります。相手のことを知らなければ「なぜこのようなことになっているか」の理解ができません。双方の教職員とも、子どもたちのことを思わない人はいないはずです。合同で研修を実施することなどで、理解が深まるといいなと思います。

次回は第2部各論の1「幼児教育の質の向上について」の続きを読んでいきます。

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