令和の日本型教育とは8

「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)が令和3年1月26日に中央教育審議会より出されました。

この答申を少しずつ読んでいきましょう。今までチュウキョウシントウシンとカタカナで聞こえていた内容が、中教審答申と漢字で聞こえるようになるように、行政職の皆様も知識を蓄えていっていただければと思います。

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本日は第1部総論の4「令和の日本型 学校教育」の構築に向けた今後の方向性」を読んでいきましょう。

学校の本質的な役割として、今までの学校教育が果たしてきた3つの役割を重視し、継承していくことが述べられています。

  • 学習機会と学力の保障
  • 社会の形成者としての全人的な発達・成長の保障
  • 安全 ・ 安心な居場所・セーフティネット としての身体的、精神的な健康の保障

そのうえで、令和の日本型教育を実施するとあります。何も引かずに足されているだけですが、「全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学び」を実現しようとしています。

その次に、足してばかりではいけないことがきちんと書かれています。少し長いですが引用します。

「その際、 学校現場に対して新しい業務を 次から次へと 付加するという姿勢であってはならない。学校現場が力を存分に発揮できるよう、学校や教師がすべき業務・役割・指導の範囲・内容・量を、 精選 ・ 縮減 ・重点化するとともに、教職員定数、専門スタッフの拡充等の人的資源、 ICT 環境や学校施設の整備等の物的資源を十分に供給・支援することが 国に求められる役割である。」

つまり、国がちゃんと専門スタッフやICT環境を提供する、と言っているわけです。学校教育の情報化の推進に関する法律で示されているように、「国は学校教育の情報化に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する」を実行していると考えられます。

国はここまでこれをやる、だから学校教育の情報化の推進に関する法律で地方公共団体の責務も定義されていますから、それを実施するように、という意図も含まれていそうですね。

さらに、地域との連携にも言及されています。また、デジタルかアナログかどちらかではなく、教育の質の向上のために、どちらの良さも適切に組み合わせて活かしていくという考え方に立つべきである、という風に書かれています。

「○○しましょう」というだけではなく、○○するんだったら、他を減らさないといけないから、それについてはICTを活用してやっていきましょう、と書いてあるわけです。

減らすためのICT機器の活用については、使い始めたばかりの先生方にはあまり恩恵を感じられないかもしれません。行政職の皆様も、ご自分のパソコンが変わったり、使っているソフトが変わったりすれば、ストレスを感じられることでしょう。学校の先生方で、今までICTを授業でなかなか活用できなかったのは、「算盤使っていたのにいきなりMac使えと算盤を取り上げられた」状態の行政職の皆様ぐらい、仕事の方法の変更にインパクトがあることだ、と思っていただければと思います。Macが素晴らしいパソコンであることは承知していますが、今まで算盤だったものがいきなりものすごくすっ飛ばして全てパソコンで仕事しろ、なんていうのはとても難しいとわかりますね。

デジタルネイティブの行政職の方には「?」かもしれませんが、昔はパソコンを使わずに仕事をしていました。さすがに算盤世代はあまりいないのですが、計算機で計算をしていたのが、だんだんパソコンに置き換わったんですね。私は学校現場にエクセルが導入された時、一瞬で平均が計算できるのを見て、「これで業務軽減が図られるに違いない」と思ったものです。現実は、より一層業務が増えているので皮肉なものですが。便利な道具を手に入れると、あれもこれもそれもやりたい、とどんどん業務に付属するものが増えていったんですね。

そのため、「ICTを活用して業務を減らす」ことを強く念頭に置いておかないと、ICTを活用して今まで時間がかかる処理を軽減できたら、「その分、質を高めよう!」 という方向にすぐ向かいます。それはとてもいいことなのですが、やることが増える一方では、先生方は元気いっぱいに子どもたちと勉強していただけるのか疑問です。

何もかも質を高めようとして、余裕がなくなるのは本末転倒です。どうか先生方から、「業務をICTで減らすことができる」ことを、子どもたちに示していただき、行政職の皆様はそれを強力に後押ししていただければと思います。

次回は第1部総論の4「「令和の日本型 学校教育」の構築に向けた今後の方向性」の続きを読んでいきます。

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